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法定後見と任意後見との違いをみると、下記のとおりです。
★ 法定後見の特徴と任意後見との違い
①利用できる方は
判断能力が衰えた方は、法定後見を利用することができます。判断能力の衰えが人それぞれにより異なり、そのレベルもいろいろありますが、三つのレベルに分けると、次のような区分になります。
(a)依然と比べて忘れっぽくなった方 補助(判断能力が不十分な方を対象)
(b)忘れるときがだいぶ増えてきたが、しっかりしているときもある方
保佐(判断能力が著しく不十分な方)
(c)しっかりしているときがほとんどない方 後見(判断能力が欠けている方)
任意後見を利用することが方は、①判断能力がしっかりしている方、
②以前と比べて忘れっぽくなったという法定後見の補助(判断能力が不十分な方を対象)の方です。
しっかりしているときがほとんどないという後見(判断能力が欠けている方)レベルの方は、任意後見制度を利用することができません。
②成年後見人等(代理人)は
家庭裁判所は、本人を支援する成年後見人等を選任します。本人や親族の方が、成年後見人等の候補者を申立書に記載することはできますが、その候補者が本人にとって最良の方かどうか、家庭裁判所が情報を収集して審判します。
本人の判断能力の衰えの状況により、成年後見人等は①成年後見人、②保佐人、③補助人と呼びます
任意後見では、本人が任意後見の代理人である任意後見人を決めます。
任意後見契約締結時には本人の代理人を任意後見受任者といい、任意後見契約がスタートしてからは任意後見人という名称に代わりますが、任意後見受任者と任意後見人とは同一人です。
法定後見では、家庭裁判所が成年後見人等を選任しますので、本人が信頼している人を任意後見人に委任する任意後見とは相違します。
③監督をするのは
法定後見では、原則として家庭裁判所が、成年後見人等が適正に後見事務を行い、不正な行為や著しい不行跡などがないかどうか監督します。
任意後見では、任意後見監督人が任意後見人を監督します。
④スタートするのは
法定後見は、家庭裁判所が成年後見人等を選任するという審判が確定した時からスタートします。
任意後見では、即効型の任意後見契約を除いて、本人の判断能力が不十分になったときに、家庭裁判所が任意後見監督人を選任してからスタートします。
⑤成年後見人等の仕事は
成年後見人等の仕事は、成年後見人、保佐人、補助人の区別により、本人を支援する方法が異なりますので、その仕事の内容も異なります。また、同一の類型でも、支援する内容が本人ごとにより異なりますので、成年後見人等の仕事も異なります。
家庭裁判所が申し立てに関する情報を収集して、本人ごとの必要に応じて審判します。
人後見人は、任意後見契約で定めた委任事務を行うことが仕事です。
本人と任意後見人が任意後見人の仕事を決める点が法定後見と相違する点です。
⑥法律行為の取消権は
成年後見人には、法律行為の取消権が当然にあります。保佐人・補助人は、同意権付与の審判の範囲内で、本人と保佐人等の同意のない法律行為を取り消すことができます。
任意後見人には、本人が行った法律行為を取り消すことができません。
⑦成年後見人等の報酬は
家庭裁判所が、成年後見人等の報酬を審判で決定します。また、成年後見人等は、自ら報酬付与審判を申し立てをしないと報酬がもらえませんし、具体的な金額についても決定がでるまでわかりません。案件によっては、成年後見人等が予想していた報酬額を大きく下回る審判が出ることもあります。
任意後見人では、任意後見人と本人との間で、報酬額について、日当の部分まで詳細に決めることになります。
⑧成年後見人等の報酬の受領時期は
成年後見人等の報酬gは、おおむね一年後の後払いとなります。
任意後見契約では、日常的な業務の報酬を定額報酬として月払い、定額報酬以外の報酬を任意後見事務を行った後払いとしている点が法定後見と相違します。
⑨報告の時期は
成年後見人等は、家庭裁判所が報告期限を示した期限に成年後見人等が行った業務の報告をします。毎年必ず一年に一回報告します。
任意後見では、任意後見事務を行った報告について三カ月から六カ月ごとに一回なでと任意後見契約書の定めにより行います。
法定後見と任意後見とは、同時にスタートすることができません。任意後見契約を締結して登記されている場合、本人の判断能力が低下した時は、原則として家庭裁判所は、任意後見監督人を選任して任意後見契約がスタートします。
| 法定後見 | 任意後見 |
①利用できる方: 本人の判断能力は | ・不十分な方(補助 ・著しく不十分な方(保佐) ・欠けている方(後見) | ・ある方 ・不十分な方
|
②成年後見人等(代理人)は | 家庭裁判所が選任する | 本人が決める
|
③監督するのは | 家庭裁判所 | 任意後見監督人 |
④スタートするのは | 後見開始審判等の確定後 | 任意後見監督人選任の審判確定後 |
⑤成年後見人等の仕事は | 補助・保佐・後見の類型により異なる | 契約で定めた内容 |
⑥法律行為の取消権は | ある | なし |
⑦成年後見人等の報酬は | 家庭裁判所が決める | 契約で決める |
⑧成年後見人等の報酬の受領時期は | 開始後、1年の後払い | 契約で定めた時(一般的には定額報酬は毎月末日) |
⑨報告時期は | 1年ごと(原則) | 契約で定める(一般的には3カ月から6カ月に一回) |
臨時保佐人の職務は、保佐人やその代表者と被保佐人との利益が相反する行為を被保佐人に代理したり、同意や取消しを行うことです。
例えば、保佐人が被保佐人の不動産を購入する場合、保佐監督人がいないときは、臨時保佐人が被保佐人を代理して保佐人との間で売買契約を締結します。
図表13 保佐人が同意・取消ができる行為
① 元本を領収したり、元本を利用すること。
② 借財や保証をすること。
③ 不動産その他重要な財産に関する権利を得たり、失ったりすることを目的とする行為をすること。
④ 訴訟行為を行うこと。
⑤ 贈与・和解・仲裁合意をすること。
⑥ 相続の承認・相続の放棄・遺産の分割を行うこと。
⑦ 贈与や遺贈を拒絶したり、負担付贈与や遺贈を受諾すること。
⑧ 新築・改築・増築・大修繕を行うこと。
保佐監督人とは、被保佐人・親族・保佐人の請求、または家庭裁判所の職権により、家庭裁判所が選任した人のことです。
保佐人に代理権や取得権が当たえられたことにより、保佐人を監督する必要がある場合に任意的に選任されます。
75歳のCさんは、数年前に伴侶を失い、兄弟のいる東京で2年前から一人で生活をしていました。Cさんは、東京に来てから幻覚や幻聴に悩まされ、精神科に通院していましたが、成年久件制度について、区役所の保健センターの職員から説明を受けました。
Cさんは、持病があり、健康上の問題から一人暮らしに不安があったので、郊外の有料老人施設に入居することを決めました。主治医の判断により、Cさんには、任意後見契約の締結能力があるとのことで、任意代理契約と将来型の任意後見契約を締結し、自宅を売却して老人施設の入所費用に充てて施設に入所しました。
この施設は、Cさんが生まれ育った故郷と雰囲気が似ており、数か月後にはすっかり施設になれて元気に生活をしています。Cさんは、転居後、幻覚や幻聴の病状を発症せず、今では、精神科の通院も不要となり、大変明るく楽しい生活を送っています。
補助監督人の職務は、補助人を監督することです。
また、補助人やその代表する者と被補助人との利益が相反する行為について、被補助人を代理し、また、同意権・取消権を行使することです。
さらに、補助人が欠けた時に新たに補助人を選任する請求を行い、急迫な事情があるときには必要な処分を行うことです。
図表14 補助人が同意・取消ができる被補助人の行為
①元本を領収し、または、元本を利用すること。
②借財または保証をなすこと。
③不動産その他重要な財産に関する権利を得たり、失ったりすることを目的とする行為をすること。
④訴訟行為を行うこと。
⑤贈与、和解または仲裁合意すること。
⑥相続の承認や相続の放棄または遺産の分割を行うこと。
⑦贈与もしくは遺贈を拒絶し、または、負担付贈与や遺贈を受託すること。
⑧新築、改築、増築または大修繕を行うこと。
例えば、被補助人が認知症であり、被害妄想や物忘れの症状を発症している場合、被補助人は「被補助人の大切な者」を盗られたとか、交換されて品質の悪いものがあるなどを補助人に訴える場合があります。また、被補助人が、他人の物を自分の物と勘違いをし、他人の物を持ってきてしまう場合などが想定されます。最悪の場合は、被補助人の一番大切な人である補助人に対し、攻撃の対象を向けることが予想されます。
さらに、被補助人の判断能力が後見類型と比べると残存していますので、被補助人が補助人を自分のヘルパーのような気持ちになります、事実行為を要求する場合も想定されます。被補助人に身寄りがいない場合は、補助人がどの程度、財産管理や身上監護に付随した事実行為を行うのかという場面に直面します。実務的補助人を支援する方法の検討が必要と感じています。
職業後見人とは、①弁護士や司法書士などの法律実務家、②社会福祉士等の介護の専門家、③社会福祉協議会、④各種団体で、成年後見業務を職業として行っている人や団体をいいます。
成年後見人等には、親族が選任される事例が多くありますが、職業後見人が選任される割合は、全体の役18%と公表されています。
弁護士、司法書士や社会福祉士などの中で、成年後見制度の必要性を痛感し、積極的に研修し業務として成年後見制度に取り組んでいる専門家を総称して職業後見人と呼んでいます。
職業後見人は、親族後見人が後見事務を行うことが難しい事案や第三者と交渉や法的事務を必要とする事案、親族間に争いがあり公正な後見事務を行う必要がある事案などに選任されているようです。
図表15 成年後見監督人の職務
❶後見人の事務を監督すること
(民法第851条第1号)
①後見監督人は、後見人に対し、何時でも後見事務の報告や財産目録の提出を求め、また、被後見人の財産を調査することができます(民法第863条第1項)。
②後見監督人は、家庭裁判所に対し、被後見人の財産の管理その他後見事務について必要な処分を請求することができます(民法第863条第2項)。
➋後見人の選任を請求すること
後見人が欠けた場合は、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求することができます(民法第851条第2号)。
後見人が欠けた時とは、後見人がその任務を辞して新たに後見人を選任する必要が生じたとき(民法第845条)、死亡したときなどです。
❸急迫の事情のとき必要な処分を行うこと
急迫の事情がある場合に、必要な処分を行うことができます(民法第851条第3号)。
❹利益相反行為の代理をすること
後見人またはその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表することができます。
❺財産目録等の調整に立ち会うこと
後見人が被後見人の財産を調査して財産目録を作成する際、成年後見監督人は、後見人の財産調査及び財産目録の作成に立ち会わなければなりません(民法第853条第2項)。
❻後見人から債権・債務の申出を受けること
後見監督人は、後見人が被後見人に対し、債権があったり債務があった場合に、財産の調査前に後見人から債権・債務の申出を受けることができます(民法第855条第1項)。
❼営業や民放第13条第1項の同意をすること
後見監督人は、後見人が被後見人に代理して営業や図表13の行為をするときに同意することができます(民法第864条)。
①後見人は、後見監督人の同意を得ないで行った行為を取り消すことができます(民法第865条)。
②後見監督人が選任されている場合、その同意がないと、売買や消費貸借、抵当権の設定等ができませんので、注意が必要です。
❽人事に関する訴えの原告、被告となること
成年被後見人が人事に関する訴えの原告または被告となる場合、成年後見人が訴えに係る訴訟の相手方となるときは、成年後見監督人が、成年被後見人のために訴え、または訴えられることができます(人事訴訟法第14条)。
❾後見人の解任の請求をすること
後見人不正な行為、著しい不行跡、その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所へ解任を請求できます(民法第846条)。
任意後見監督人とは、任意後見契約を締結した後、任意後見が登記されている場合に、本人が精神上の障害により、事理を弁職する能力が不十分な状況にあるため、本人・本人の配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者の申し立てにより家庭裁判所から選任される任意後見人を監督する人や法人です。
任意後見契約が登記されているとは、任意後見契約を締結した後、公証人が法務局に委託して後見登記等ファイルに定められた内容を記録することをいいます。
任意後見契約が登記されているときは、任意後見契約を締結した後、公証人が法務局に嘱託して後見登記等ファイルに定められ田内容を記録することをいいます。
任意後見監督人は、善良なる管理者の注意をもって後見事務を処理する義務を負っています(任意後見契約に関する法律第7条第4項で民法第644条を準用)。
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