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川崎遺言・成年後見相談室
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認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が欠けているのが通常の状態の方は、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりすることが難しい場合があります。さらに、自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援するために家庭裁判所で選任される法定代理人が成年後見人です。
成年後見人以外には、保佐人と補助人という制度がります。
保佐人:判断能力が著しく不十分な方を保護する。
補助人:判断能力が不十分な方を保護する。
被後見人等は、法律行為を行う場合、原則として、後見人等が代理又は、同意をすることで法的に不利益を受けないように保護されます。
保佐か補助かは、最終的に裁判所の鑑定によって決定されます。
後見人 | 保佐人 | 補助人 | |
申立人 | 配偶者、四親等内の親族等 | 同左 | 同左 |
同意が必要な行為 | - | 民法13条1項所定の行為 (注1)(注2) | 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める特定の法律行為 |
取消可能な行為 | 日常生活に関する行為以外の行為 | 同上 | 同上 |
代理権の範囲 | 財産に関するすべての法律行為 | 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める特定の法律行為 | 同左 |
制度を利用した場合の資格などの制限 | 医師,税理士等の資格や会社役員,公務員等の地位を失うなど | 同左 | - |
(注1) 民法13条1項では、借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、新築・改築・増築などの行為が挙げられています。
(注2) 家庭裁判所の審判により,民法13条1項所定の行為以外についても,同意権・取消権の範囲を広げることができます
成年後見制度とは、高齢者、障害者等を支援するために設けられた制度で、成年後見人等が成年被後見人等(以下、本人といいます)の財産管理および身上監護の事務について、本人を代理したり、本人が行う行為に同意したり、本人が行った行為を取り消したりするものです。
成年後見制度とは、高齢者や障碍者等を支援するための制度です。
成年後見制度は、平成12年4月1日施工により、図表1のとおり判断能力の不十分な方のために補助類型制度が新設され、禁治産や準禁治産という制度が後見類型、保佐類型と改められて補助類型とともに法定後見とされ、新たに任意後見という制度が新設されて、法定後見と任意後見を合わせた制度に改められています。
高齢者・障害者等とは、精神上の障害により判断の能力が低下した方々のことをいい、身体上の障害を持った方々は含みません。
具体的には、認知症(従来の痴呆症という呼称に改められました)、統合失調症、中毒性精神病、知的障害、頭部外傷による高次脳機能障害などの方々が該当します。
びまん性れびーる小体病などは、今後の研究が待たれます。
財産管理の事務とは、成年後見人等が成年被後見人等の預貯金や不動産などの財産を管理する事務のことを言います。
具体的には、預貯金の入出金、各種の費用の支払いや受領、不動産の管理や保存などの事務について成年被後見人等の代理などをして行います。
身上監護の事務とは、成年後見人等が成年被後見人等の心身の状況や生活の状況に配慮して病院の通院や入院、施設の入所や退所、介護サービス契約の締結や変更、解約を行う事務のことをいいます。
法定後見では、原則として家庭裁判所が成年後見人等を監督し。任意後見では家庭裁判所が選任した任意後見監督人が任意後見人を監督します。
家庭裁判所が直接または間接的に監督するシステムになっています。
成年後見制度は、自己決定(自律)の尊重、身上配慮義務、残存能力の活用、ノーマライゼーション、アドヴォカシ―などを基本理念としています。
成年後見制度は、自己決定(自律)の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーション、アドヴォカシーなどを基本理念としています。
そして、立法の主旨は、これらの理念と本人の保護の理念との調和にあります。
自己決定の尊重とは、後述の身上配慮義務とともに成年後見制度の基本理念とされ、成年後見人等は、本人(成年被後見人等)の生活、療養看護および財産の管理に関する事務を行うにあたっては、成年被後見人等の意思を尊重し、かつ、その心身の状態および生活に配慮しなければなりません。
本人の老後について、温泉のある有料老人ホームで安全で健康に過ごしたいとか、生活するには危険もあるが安全よりも住み慣れた自宅で最後まで暮らしたいといった本人の希望(自律)を尊重する考え方です。
身上配慮義務とは、成年後見人等が財産管理および身上監護の事務を行うにあたり、成年被後見人等の心身の状況および生活の状況に配慮しなければならない義務をいいます。
身上配慮義務の基本性格は、成年後見人等が本人の身上面について負うべき善管注意義務であるとされていますから、すべての類型の成年後見人等が本人の身上に配慮すべき
義務を負っています。
身上に配慮するとは、自宅で生活している成年被後見人等が食事の準備がうまくできないときに、介護サービスを利用して食事の準備を支援する方法をアドバイスし、成年被後見人等の体調がすぐれないときに、訪問医師の往診の手配をアドバイスして本人の承諾のもとに医療契約を締結するなどを行うことをいいます。
また、施設生活をしている成年被後見人等が病気やけがをしたり、医療機関へ通院したり、入院することを成年被後見人等や施設職員と相談して医療契約を締結する配慮を行います。
高齢者等が自分らしく老後を送るためには、自分の能力を活用することが必要であるという考え方です。
自分の老後を信頼できる人に託して、自分の残存能力を活用する任意後見制度を利用するなど、さまざまな場面で残存能力の活用が求められています。
例えば、日ごろから本人の良き相談者である司法書士Aさんと老後について話し合いました。そして、自宅で生活している本人は、将来、認知症などにより判断能力が衰えた時は、本人の財産管理及び身上監護の事務をAさんに依頼することを希望し、自然豊かな場所の有料老人ホームでの生活ができるように任意後見契約を締結するというように活用します。
ノーマライゼーションとは、高齢者や障碍者などが、その地域で不通に生活できることが当然であるという考え方です。この考え方に従って、高齢者や障碍者などが普通に生活でき
る環境を成年後見制度の活用により実現しようとするものです。
またアドヴォカシーとは、本人の身上面に関する利益の主張を補助し、または本人の身上面に関する利益を代弁することをいい、本人(成年被後見人等)が認知症などで言いたくても言えないことを代弁することや老人性肺炎などで緊急に入院する必要があるときには、成年後見人等が補助したり、代弁して、本人の健康に配慮することです。
85歳で一人暮らしのAさんは、東京から500キロ鼻r田故郷から上京し、60年間、現在の自宅で生活しています。しかし、数年前から認知症の病状が発症し、銀行の通帳や実印などの財産の管理や病院への通院や入院費の支払いなどが困難になてきました。
預金通帳からの入院費の引き出しができずにいたところ、Aさんの判断能力が不十分であるため成年後見制度を利用するようにとのアドバイスを受けて、親族が申立人となり法定後見の申立をしました。
選任された成年後見人を中心にして、本人(成年被後見人)の自己決定である在宅での生活を確保しながら、業院の主治医や担当医、理学療法士・作業療法士、在宅支援介護センターのケアマネジャー、訪問看護のスタッフ、ヘルパー、社会福祉協議会、区役所、そして遠方の親族と連携しながら身上監護をし、本人の自宅を修繕するなどの財産管理をして、本人が安心して自宅で生活を送ることができるよう支援しています。
88歳のBさんは、単身で不動産を賃貸しながら自宅で生活をしていました。しかし、Bさんは、認知症の発症や体が不自由であるため急な階段を上り下りしなければならない2階で生活していくことが困難になったため、グループホームへ入所しました。
Bさんのために親族が申立人となり、成年後見人が選任されました。
成年後見人は、Bさんが病院へ入退院し、また、老人施設へ入退所する手続きを14階行い、また高額の出費が予想されますので、Bさんお自宅を処分したりして、今後の生活費をねん出する準備をしています。
75歳のCさんは、数年前に伴侶を失い、兄弟のいる東京で2年前から一人で生活をしていました。Cさんは、東京に来てから幻覚や幻聴に悩まされ、精神科に通院していましたが、成年久件制度について、区役所の保健センターの職員から説明を受けました。
Cさんは、持病があり、健康上の問題から一人暮らしに不安があったので、郊外の有料老人施設に入居することを決めました。主治医の判断により、Cさんには、任意後見契約の締結能力があるとのことで、任意代理契約と将来型の任意後見契約を締結し、自宅を売却して老人施設の入所費用に充てて施設に入所しました。
この施設は、Cさんが生まれ育った故郷と雰囲気が似ており、数か月後にはすっかり施設になれて元気に生活をしています。Cさんは、転居後、幻覚や幻聴の病状を発症せず、今では、精神科の通院も不要となり、大変明るく楽しい生活を送っています。
人格障害とは、人は、それぞれ個性があり、個人差があることは当然ですが、平均的な個性・個人差から大きくずれた人がいて、社会生活や人間関係でうまくいかず、周囲を大変悩ます方がいますが、このような障害を人格障害といっています。
人格障害には、図表4のような分類があり、成年後見制度で相談される場面も多いのではないかと推定します。
人格障害の方の場合、本人の承諾を得ることが難しい場合が多く、成年後見制度で対応することが難しい場合もあると考えます。
頭部外傷による高次脳機能障害とは、交通事故などにより、農が損傷を受け、記憶力の低下、注意力や集中力の低下、感情や行動の抑制の低下などがある生涯をいいます。
高次脳機能障害の病状おt成年後見制度における判断能力が低下した本人の病状とが類似し、本人を支援するために、成年後見人が身上監護と財産管理の後見事務を行うことになります。
高次脳機能障害には、下記のような病状があります。
・失語
・失認
・地誌的障害
・注意生涯
・失行
・記憶障害
・遂行機能障害
・情動や人格の障害
びまん性レビー小体病とは、パーキンソン病とアルツハイマー病が同時に発症したような病状があり、幻覚などがあることが特徴です。日による変化があり、調子が良い敵には病状が顕著にあらわれず、逆に調子が悪いときには重い認知症上にみえます。
しかし、病的に脳の萎縮がみられなかったり、短期記憶力があり、専門医の診断により本人を支援する必要があります。
成年後見制度を利用する場合、審問委の診断をもとに法定後見の補助や任意代理と任意後見の組み合わせなど、本人の状態によりデリケートな対応が望まれます。
知的障碍者や精神障碍者などの方の問題として、「親亡き後の問題」があります。障害のお子さんを支えている両親の高齢化や死亡により子供の支援ができなくなるという問題です。その逆に、高齢の親を子供が支援している場合、子供が高齢になったり、不治の病に冒されるなどして親を支援できなくなるというmン代です。
前者のケースが多いのが現状ですが、万一の疾病や事故が起きて問題を抱えている子供を支援しなければならない状況を解決するために成年後見制度を活用することで、親の問題を解決する場合があります。
例えば、法定後見の後見類型の父親Dさんの成年後見人である長男Xさんは、不治の病に冒され、余命1年の診断をうけました。Xさんの判断能力は十分ありますが、日ごとに身体機能が低下しています。
そこで、一人暮らしのXさんは、親しい友人の支えで行ってきた後見業務を、今後は職業後見人に託すことにしました。
まず、Xさんは、職業後見人と任意代理契約および人後見契約を締結して、Xさんの財産管理と身上監護の事務を依頼しました。Xさんの任意代理人は、Xさんの任意代理人は、Xさんの治療費の支払いや店員の手続きを行い、今後の治療費の燃油ツ方法をXさんと相談しました。
その後、Xさんの病状が急変したため、遺言書を公正証書で作成し、Xさんが死亡した後の父親Dさんの成年後見人をXさんの二に代理人に選任してほしいという希望も公正証書に記載しました。
Xさんが死亡すればDさんの成年後見人が欠けたことになるので、家庭裁判所がXさんの後任者を選任することになります。成年後見人の指定を遺言書で行うことはできませんが、Xさんの死後、家庭裁判所は、Xさんの意思を汲んで、Dさんの成年後見人にXさんの任意代理人を選任してくれました。
Yさん一家は、父親であるY1さん、母親であるY2さん、長男Y3さん、30歳代の二男Y4さんの、4人暮らしで生活をしています。Yさん一家は、数年前、旅行中に数百メートル離れたところで爆弾テロの現場を目撃し、幸いにも事故に巻き込まれずに助かりました。
そんな時に成年後見制度を知り、両親の後見の問題や不慮の事故に備えて、成年後見制度を利用すれば、Yさんの親戚に迷惑をかけずに今後の問題に対応することができるのではないかと考えました。
経験豊富な職業後見人と1年間にわたる健闘の末、一家全員で将来型の任意後見契約を締結し、条件付きの任意代理契約と見守り契約、公正証書による遺言を組み合わせて、将来に備えるプランを築きました。
現在、見守り契約だけが発効し、職業後見人と現状の確認をしながら、安心して日常生活を送り、Yさん一家の楽しみである旅行を満喫しています。
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